バージョン 2020 で導入された新機能に「リジッドモーション」という機能があります。
ご存じでしょうか?
「リジッドモーション」は、アドバンスGSM(ゾーンモデリング)コマンドの「目標の形状」に追加された新しい拘束条件です。
しかし少し階層の深いところにあるため、気がつきにくいかもしれませんね。
今回はこの「リジッドモーション」について。
リジッドモーションは、「変形せずに移動するだけ」という条件です。
変形時に移動する先がハッキリしている場合は、通常の一致条件でOKです。一方リジッドモーションは、「周囲の変形条件に合わせて位置は変わるが、形状は変わらない」というものです。
どんなときに使うのでしょうか。例えば、、、
ここに簡単ですが、車のモデル(半分)があります。このモデルを変形してみます。
後端を固定して、
前端を押して、全体を縮めてみます。
単純に前端を押して縮めると、ホイールアーチの形状が前後方向に押しつぶされたように変わってしまいますね。
そこで、前後のホイールアーチのエッジにリジッドモーションを設定して同様に変形してみます。
すると、今度は変形後もホイールアーチの形状は変わっていません!
変形前のホイールアーチのエッジを曲線として取り出しておき、変形後の形状に重ねてみると、ぴったり一致して、形状が変わっていないことがわかります。
実際の車のモデルではホイールベース(前後の軸間距離)は重要なパラメーターのため、ホイールベースが周囲の変形条件によって後から決まる、ということは普通はありませんが、まぁこれは、一例と言うことで。
*********************
GSMによる変形は、「要素のある空間自体を変形する」と例えられます。
この変形する空間(=変形空間)内にある要素は、変形空間を基準にして見ると、その形状は変わりませんが、変形空間の外から見ると、空間が変形するのに合わせて形状が変わっています。
一方、「リジッドモーション」の条件を付けた要素は、変形空間基準で見ると、「変形に逆らって逆方向へ変形する条件が追加された要素」であると見ることができます。
そのためリジッドモーションをうまく適用するためには、リジッドモーションを付けた要素が変形空間内を自由に移動できる 必要があります。つまり、リジッドモーションを付けた要素に別の拘束条件を追加すると、うまく変形できません。
また、リジッドモーションを付けた要素のすぐ側に別の拘束条件があった場合も、なかなか精度が上がらないことがあります。ただしこれは、相反する条件を隣接する要素に追加した場合には、他の拘束条件でも発生し、そういった意味では、その他の拘束条件と同じとも言えます。
若干の注意事項もありますが、新しい 「変形しない」変形条件 である「リジッドモーション」をご活用ください。
thinknews vol.660(2020年8月21日配信)
Comments