ThinkDesign で取り扱う要素は内部的に「トレランス(Tolerance)」を持っています。
「トレランス」という言葉にはいくつか意味がありますが、今回ここで取りあげる「トレランス」は、要素自体が持つ 近似値 とでもいうような意味の「トレランス」です。このトレランスは、要素の幾何計算などに使用されます。
「トレランス」という言葉にはあまりなじみがないでしょうか。何だそれ?という感じかもしれません。特に、トレランスの値を調べる機能は標準機能には無いため、あまりお目にかかることは無いかもしれません。
この「トレランス」によく遭遇するのは、ソリッド化コマンドです。
複数の曲面をまとめてソリッドにしようとした際に、きちんと閉じていないと、結果がオープンソリッドになる旨が表示されます。
「開いた境界線へポインタを表示」を選択すると、開いている部分に矢印が表示されます。
このデータの例だと、この部位は最大 0.02 mm ほどの隙間があるようです。
そこで、ソリッド化コマンドで表示されるダイアログから「トレランスを編集」ボタンを選択します。
そして、0.02 より大きい、例えば 0.03 程度の値を入力すると、上記の隙間は無くなります。(無いものとみなされるようになります。)
これが典型的なトレランスの値を入力する場面です。
しかし、ここで気をつけなければならないのは、不用意に大きな値を入力すると後で問題が発生することがある点です。
上の例だと、0.03 mm と入力していますが、これは「0.03 mm 以下の隙間を無いものとみなせ」と指令しているのです。つまり、この指定後、当該部位付近において 0.03 mm 以下の小さなものは認識されなくなると言うことです。
ここで例えば、1 mm とか 2 mm といった極端に大きな値を設定してしまうと、交点や交線が計算できなくなったり、面のトリムができなくなったりなど、後々、様々な問題が生じる可能性があります。(モデル全体の大きさにもよりますが、通常、0.03 mm はかなり大きな値の指定です。)
逆に言うと、そのようなおかしな動作に遭遇した場合は、挙動のおかしい要素のトレランス値を調べてみると、その原因が分かるかもしれません。
T3Japan tools には、要素のトレランス値を調べるコマンドがあります。
このコマンドでは、曲線や曲面を選択できるほか、ソリッドのエッジを選択することもできます。トレランスの値の他、要素IDや要素タイプも表示されます。
さらに、「I/O Window に出力」にチェックすると、情報を I/O Window に出力します。
ここには要素のIDも出力されているので、前回ご紹介した「ID指定で要素をズーム」コマンドを使用すると、
後から問題の要素(トレランス値の大きい要素)を特定することができます。
問題が発生しないに越したことはありませんが、これらのコマンドが、何か発生してしまった場合の、解決への一助になるかもしれません。
thinknews vol.783(2023年10月20日配信)
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